裏庭のカナ

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 程なくして俺は「少なくとも見える範囲には何もない世界」に降り立った。改めて辺りを見回すがやはり何もない。上から見て無かったのだから当然か。 「ふむ……」  少し考えて、周辺を探索してみることにした。言うなれば唯一の人工物であるこんな梯子を取り付けた誰か(腕のいい職人さんとか)がいる可能性は高い。  腕時計と太陽で方角に見当をつけ、寮を目印に振り返ってぎりぎり見えるところまで歩いては引き返す。  東西南北の四方に足を延ばしてみたが何も見つからず、今度はその中間、つまり北東、北西、南東、南西に探索範囲を広げてみた。 「……ん?」  南西の方向に歩いていた時遠くに何かが見えた気がして、俺は足を止めた。確かに何かがある。──しかも。 「近付いてきてる……」  小さな影が、ゆっくりとではあるがこちらに向かってきていた。  さて、どうする?  危険が無いとは到底言い切れないが、もし意志疎通が可能な相手ならこの怪現象について何か聞けるかもしれない。いきなり梯子職人さんにヒットするかも知れないし。  取り敢えず様子を見てみることにした。もし何かの危険があった時は……まぁ、臨機応変に。
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