0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
襲い掛かるような強烈な眠気と、容赦なく過ぎて行く時計の針。
現場事務所内に響き渡るキーボードとマウスを操作する無機質な音だけが、一人きりという現実を教えてくれる。
無心のままパソコン画面を睨みながら、両手を動かす。
この広い現場の敷地内で活動しているのは俺一人だけ・・・
いや、アイツがいたから二人だけか・・・
一人ボッチではないという妙な安心感。
二度と元に戻ることの無い時計の針。
そんな針を自らの手で進めるかのように俺はマウスを動かす。
まるで電池切れ寸前の時計の針のように、ゆっくりと時が進む感じがする。
不思議な感覚の中、アイツが夜の帳の中心で、何を思っているのかが気にかかる。
そんなことを考えながら作業をする・・・・
時計の針が5時を廻る頃、いつの間にかパソコン画面内の施工図が何とか形になっていた。
何とか間に合いそうだ・・・
施工図に目処が立ったので、ラストスパート前の休憩を取るために外の喫煙所に設置されているベンチに腰を掛ける。
朝方の強い冷え込みが頬を伝い、ライターを持つ手が震える。
アイツはもういないかな?
ベンチ前のまだ闇が濃い帳の中に、アイツの凛とした立ち姿を探してみる、
だが、真っ暗で澄み切った夜の空気しか目に入らない。
しかたなくタバコをくゆらせながら、アイツとの初めての出会いを思い出し俺は少し笑っていた。
最初のコメントを投稿しよう!