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朝、すずめが泣き出す頃には施工図は打ち出しまで終わっていた。
一仕事やり終えた俺は朝飯代わりにコーヒーを煽る。
まだ現場には誰も来ていない。
ベンチに座りながら浴びる朝日は、徹夜明けの目には眩し過ぎる。
うつむきながらタバコに手を伸ばし、咥えた時に事務所の入り口部分で気配を感じた。
事務所の角から覗き込むとアイツが何かを持って歩いている。
初めて見たときより幾分かふくよかになり、
薄汚れた白い体はほんのちょっとだけ綺麗になり、
小さかった体は少しだけ大人になったような気がする。
アイツと俺が出会ってから、色々とすることが増えて大変だ、その上減量の甲斐もあっていたって健康体となっている、後はタバコを止めるだけだ。
だけど、誰かのことを考えながら生活するのも悪くないな。
もう30分もすれば、配管屋とダクト屋のじっさま達が乗り込んでくる。
それまで、この広い現場敷地内に居るのは、俺とアイツの二人だけ・・・
正確に言えば、この広い現場敷地内に今居るのは、俺と泥棒猫のアイツ、一人と一匹だけ・・・
弁当ガラも無いのに、事務所の入り口でゴソゴソしているアイツを、気づかれないように覗きながら、少しだけ微笑んでみた。
「おい!事務所の前でねずみ死んでるぞ!ちゃんと片付けとけよ!」
朝礼前に出勤してきたダクト屋のじっさんが叫ぶ。
アイツだ・・・・何してるのかと思ったら・・・
お礼なんていいのに・・・
今日から俺の3つ目の仕事が増えてしまった。
おわり
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