1、恋のはじまり

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 交際は南奈が成人してから、と霧都は言った。 「僕はもう29になるし、無分別なことはしたくないんだよね。親御さんに顔向けできない気がして」  南奈の母は心配性だ。反対を説き伏せて上京しただけに、10歳年上の男性と付き合うなんて言ったら大変なことになりそうだ。 「他に好きなひとが出来たら言ってね」 「ありえないです」  霧都が嬉しそうに笑うのを見て、夢じゃないかと思った。 「私のどこを……その、す、好きになってくれたんですか?」  赤くなって質問する彼女を、霧都は優しく見つめる。 「そういう純粋で素直なところ。いきなり下の名前で呼ばれて意識してしまった感じもあるかな」  南奈は耳まで熱くして、自分の地元では同じ苗字が多く、下の名前で呼び合うのが普通なのだと言い訳した。
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