9.金田一の追憶

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「そんな事言わないでくださいよー、吾郎さん。報酬弾みますから!」  ――そう言われたら、いつも渋々ながら付き合ってやった。それなのに……。 「なーに、大丈夫に決まってるだろ? ドロドロ事件もヒュ~っと解決! 僕は墓場の名探偵なんだからさ!」  ――何よ、大丈夫だって言ったじゃない。それなのに……。 「全く、旭君は本当に好奇心旺盛なんだなぁ。これじゃあ名探偵の僕をいつ超えるか分かんないや!」  ――そうだ、僕は墓場の名探偵の優秀な助手なんだぞ! それなのに……。 「一人で抱え込むなって、万ちゃん。僕に任せて! 大丈夫! 何とかするからさ!」  ――あぁ、一。 「……この部屋、こんなに広かったっけ」  一人きりになった部屋で、万吉が漸く口にしたのは、そんな情けない言葉だった。
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