終焉のそのまた先へ…

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終焉のそのまた先へ…

明日には世界が無くなってしまう…そんな日がとうとうやってきてしまった。 しかも、なぜよりによって崩壊前日にそんな重要事項を伝えてきたのか。 この国は最後の最後まで国民を裏切るんですね。 確かに数ヵ月も前からそんなことを伝達してしまったら、世にも恐ろしき地獄絵図が描写されたに違いないであろうが…。 が、しかしだ…諦め一辺倒民の醜い姿を見たくないのは理解できるが、お前ら上階層族はそそくさと逃げた。 国の象徴と呼ばれる方々と宇宙船に乗って空高くだ。最近、ろくに訓練も受けてない人を乗せたロケットが続々と射出されていたのはそういうことか…。 報道規制も重点的に行ってきたのは正にこの為。政治やらずに身の保全を優先するとは頭にくる。 今となっては、足掻いても無駄だが…。 一番地球に近い惑星の火星に今頃、新しい人類の住み処を創設してるのかなぁ。技術の進歩は目まぐるしいなぁ。 でも、人類全てを救う手立ては考えつかなかったわけで、不平等に選定された価値のある人類が宇宙へと飛び出していったわけか…。 こうして悲壮なる滅亡カウントダウンに怯える人類がたくさんいるのになぁ。 無責任にもほどがある。 命の価値は平等でなければならないはずなのに…。 バタバタバタバタ…ドガンッ! 慌ただしい足音とともに僕の部屋のドアが開けられた。 「なにやってるんだい!早く逃げないと!」 母さんだ。物凄い血相だ。 「えっ?逃げるってどこに?だって、地球まるごと破壊する隕石群が地球に向かってきてるんでしょ?」 冷静に答える僕。 「も、もしかしたら隕石の間をすり抜けて生き延びる奇跡があるかもしれないでしょ!私たちにはジェット機も地下シェルターもないんだから、とにかく車で遠くへ逃げなきゃならないの!隣のお宅は家族で無理心中したんだってよ。私たちは…そんな勇気もないんだから…早く荷物まとめなさい!ゲームの世界とは違うのよ!」 必死に訴えかける母に、僕は平然とした態度で質問する。 「そうだけど…車なんかで移動したら渋滞や事故に巻き込まれるだけだよ。僕は走って向かうよ。とりあえずの目的地はどこなの?」 「……遠くへ…とにかく!遠くよ!!」 気が動転しているであろう母に僕は容赦なく詰め寄る。 「遠くに向かう…そこに助かるアンサーがあるの?」 母は鼻息が荒くなり、とうとう… 「もぉ、勝手にしなさい!!バカ息子!」 ガダンッ! 強くドアを閉められてしまった。 僕だって、死ぬのが怖くないなんて言えば嘘になる。なぜ、こうも余裕しゃくしゃくで受け答えができるのかは既に答えは出ている。 これは、夢?ノー。これは、ゲーム?ノー。 紛れもない真実。明日には世界が滅びる。 「ふぅぅー…。」 僕は深呼吸をした。 「僕は世界を守るために死ぬかもしれないのか…。」 こんな世界は一度消失してしまったほうがいい。そう思っていた。そう、思い続けた結果、この有り様だ。分からない…原因が僕なのかどうかは。 この事態は、数ヵ月も前から僕には把握できていた。だからこそ、大好きなゲームはとことんやりこんだ。狭幅の趣味だが一通りは楽しんだ。 僕がやることはただ一つ。 僕の能力で隕石群を消失させる。誰も信じてはくれないだろうが、僕には不思議な力が備わっている。 しかし…だ! 能力を使用する度に、身体へ支障を与えてることは周知の事実である。 しかも、この破壊力抜群の隕石たちを消すなんてことは…できるのだろうか。この類いには挑戦経験一切なしだ。 「まぁ、僕が原因で引き起こしたかもしれないし、僕が死んでも人類全員生き延びるならそれでいっかな。」 人助けのために何度か使用してきた能力。身の回りに起きることなら何とかはしてきた。世界全てを守るのは無理。万能ヒーローではないし、僕は普通の生活がしたかったから。 なんで、僕にこんな能力が…未だに分からない。適格者は他にもいただろうに…。 さて、今回の結末はどうなってしまうのか…。以下に記そう。 ①隕石群消滅。人類生存。僕生還。 ②隕石群消滅。人類生存。僕死亡。 ③隕石群衝突。人類絶滅。僕生還。 ④隕石群衝突。人類絶滅。僕死亡。 ⑤隕石群衝突。人類一部生存。僕も生還。 完璧ハッピーエンドは①だが、⑤も微かな希望を残してはくれる。③は僕が不死身の肉体をもつならばだが…。自害実験はしたことがない。 ちなみに瞬間移動はできないし、防御壁を構築することもできないことには一応触れておく。さらに加えて、真空状態で呼吸できるのかどうかも分からない。 ブォォォン。 ガレージから車が出発した音だ。結局…。 「さて、そろそろやりますか!!」 時間かかるかもしれないし、勿体ぶるにはいかないな。 「衝突までは大体残り12時間ってとこかな。」 ヒュゥゥゥゥ……。 僕は外に出て、まだ肉眼では確認することも出来ないであろう遥か頭上の隕石群に向かって、両手を伸ばす。掌一杯に力を込めて…。頭の中に無数の隕石が向かってくる映像が投影される。僕はその映像を破壊するかの如く、身体全身に力を込める…。そして、 「ハァァァァァァァァァァァァ……!!!」 一気に蓄積されたエネルギーらしきものを放出した。 ________数時間後… 「……ぐっ…うっぐ…」 僕はどうやら生きていたようである。 全方位遠隔物体把握能力で確認したところ、隕石群も見事に消滅させたらしい。 「やっ…やった!あっ…あれ?」 しかし、喜びは束の間、神の思し召しでもあろうか。皮肉にも選択肢にはない結末がそこには用意されていた。 全方位遠隔生態把握能力…ピピピ… 『反応…0』 ガクンッ…。 どうやら、人類全ても一緒に消失させてしまったらしい。 こんな世界は消失してしまえばいい…。 僕の安直な願いは継続していたのだろうか…。 終焉した世界で僕は一人さ迷い続ける。 「そうだ…とにかく向かってみよう。目的などはないが…希望を頼りに…」 「遠くへ!」 【完】
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