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「うわ、寒っ」
「寒いね。」
朝、一緒にホテルを出て駅までの道を歩く。
朝起きて、一緒にでるよと言われたときは驚いた。いつもなら寝てていいよと言うのに。
いいから一緒にきて、と言った彼になにかを感じとったわたしは大人しく先生とホテルを後にした。
隣に並ぶなにも言わない先生が何を考えているのかなんてわからない。ただの遊び、そうわかっているのにあんなにも優しくされると勘違いをしてしまいたくなる。
ねえ、先生、ほんとに結婚するの?
「…きれいだな、」
「え、?」
先生を見上げるとほら、と指を指す。
目の前に広がるのは朝焼け。水面に反射したそれはとてもきれいだった。
「きれい、…」
「うん、…だよ」
「え、?」
先生の言葉が聞き取れなくて聞き返そうとした瞬間、ふと腕を引かれた。気づいたときには先生に抱きしめられていた。
「…せん、せ?」
少しだけ違うなにか。昨日の夜ふざけてわたしを抱きしめたときとは違うなにかがあった。驚いてその背中に手を回す余裕もなかった。
何も言わずに、ギュッとわたしを抱きしめた彼はごめん、と呟いた。
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