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出会い
訳あり物件〜貴方の隣は大丈夫ですか〜
疲れた。
今日はサービス…いや、今日はじゃなくて今日も。か、サービス残業頑張って帰って早くお酒が飲みたいなぁ。今日はビールよりも焼酎かな…なんて考えながら階段を上がる。ボロボロのアパートではカンカンと階段を上ると鳴る。靴が硬いから余計だ。うるさい音を響かせてから自分の部屋の前に行くと変なものが座っていた。
人だ、いや、人…?驚きすぎてまじまじと見てしまったせいでよく見た目がわかった。
女子が着るビキニの上を小さくした物を着ていて下は見えない。…ってゆうかフリル…?裸ということはないだろうが絶対領域なんて存在しないもののようだ。布の面積が極端に少ないみたいで裸に見えただけだ。
そして一番驚くところはここだ。普通の人間には生えていない黒い角と黒いゆらゆらとしたしっぽ、そして黒い翼が生えていた。コウモリのように見えるがツルツルとしていてビニール素材なのか、コウモリのようにはふわふわではなかった。
とりあえず人に見えるので起こしてみる。ぐっすりと眠っているようですやすやと寝息を立てている。よく見ると顔はよく夜中のコンビニとかに居るヤンキー達と顔がそっくりだった。
(The・ヤンキーって感じだ…)
そんな顔とはアンバランスな服装と行動に少し笑ってしまう。
ふふっと息を吐くと男が目をパチリと開けた。
「…んあ?」
「あ、起きた」
「なんでここに居るんだ…?」
「いやそれこっちのセリフだから!!!」
つい大声で叫んでしまったがこれでは絶対に近所迷惑だ。とりあえず家にあげて話を聞こう。なんか、迷子かもしれないし…
「と、とりあえずこっち!立って!」
「おわ、何す…」
いいから!と言ってとりあえずグイグイと家に押していく。
バタンと扉を閉じると彼(?)の尋問を始める。
「君誰?」
「淫魔…」
淫魔ってあれか、精気を取ったり、子供を植え付けてくとかいう謎に害悪な…っていうよりエロゲーによく出てくる淫魔とかの方か…?見た目的にはそうだよなぁ…
「いん…あー、先に名前教えてくれる?」
「シューザ…だけど…」
「シューザ君、なんで俺の家の前に居たの?」
お前の精気を貰いに来た。と言ってシューザ君は俺をじっと見てくる。
「…えーと、俺の?」
「あぁ、上から見てたら…お前が、その…美味そうだった」
「…精気食べに来ただけ?だったら帰って欲しいな。俺今からご飯だし、お風呂入るし、寝たいんだよね」
あと正直男相手に精気を、あげるつもりもないし、あげる彼女もいない。寂しいな…
「ん…やだ」
「や、やだって…無理だよ。俺には俺の予定があるし」
「やだ」
そういってシューザ君は俺の目の前に立ち上がる。
よく見えるようになった身体はなかなかにシュールだった。白のフリフリのビキニ。そのビキニが栄えるムキムキのシックスパック。細身なのによく着いてるな、って思うくらいの筋肉。俺より身長が高い。178とかあったんだけど…でかいな…そう思いながらもやはりまじまじと見ると笑ってしまいそうだった。ビキニが似合わなさすぎる。
「…お前は、女の方がいいか?」
「へ?」
「女じゃないと嫌なのか…?」
「ん…できればそうだね。女の子がいいかなぁ、硬い身体じゃなくて柔らかい身体の…」
ぎゅっと口を縛ると分かったと言ってふらふらとどこかへ行ってしまった。どこから来たんだ。
まぁ気にしないで良いだろう。俺は疲れたし、彼は美味しそうだからとかいってたから、他に美味しそうな人を見つけたらそっちの方行くでしょ。
そう思いながら俺は風呂へ行く。明日も残業かな…
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断られてしまった。人間は淫魔を好きなんじゃないのか…?
俺が男だからか…?男だけど、れっきとした淫魔なのに…美味しそうだと思ったのは確かだけど、別の感情が俺にはあった。
その感情を確かめるために…とは言っても半ば強制だが…友人であるハレビールが俺をここまで落とした…?のだ。
-------ハレビールには「人間の感情だから捨てろ」までと言われた。それは…恋と言うものらしい。恋というものは分からないけれど、出会ったら分かるといつの間にか家を追い出されていて目の前には気になっていた人間の家。
「な、んて読むんだ…?」
分からなくて首を傾げる。
「わ、かんねぇ…」
試しにピンポンを押してみる。人間はここを押すと出てくる。人間界に詳しくない俺でもそれは知っていた。
ピンポーン
ピンポーン…
ピンポーン……
「出てこねぇ…」
なんでだ?人間はここを押したら出てくるんじゃねぇのか?押せてねぇのか…?いや、でも…音は鳴ってるし…人間界は意味わかんねぇ…
ストンとその場に座る。下がこんくりーと?だったか…?だからか冷たくて薄着の自分には辛い。
あいつは確か、毎日黒い服を着て毎日くたびれて帰ってくる。どこか、行ってんのか…?そっか、だから出てこなかったのか…帰ってきたら、さみぃから、ぎゅっと抱きしめてやろう…俺も、抱きしめて…もらお…う…
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くすりと笑う音がする。
「…んあ?」
「あ、起きた」
「なんでここに居るんだ…?」
「いやそれこっちのセリフだから!!!」
大声で叫ばれてとても驚いた。怒られた…?でも顔が母さんとか父さんとはちがうな…人間だからか…?
「と、とりあえずこっち!立って!」
「おわ、何す…」
腕をぐいと引っ張られてドアの中に入る、家の中は外よりは暖かいがやっぱり寒かった。
ドアの鍵がガチャリと閉められると質問される。
「君誰?」
「淫魔…」
淫魔って言って伝わるかは分からないがハレビールが人間は淫魔が大好きだから詳しいはずだ、と言っていた。淫魔でいいだろう。
「いん…あー、先に名前教えてくれる?」
「シューザ…だけど…」
「シューザ君、なんで俺の家の前に居たの?」
お前の精気を貰いに来た。言っておいた。間違ってない。
「…えーと、俺の?」
「あぁ、上から見てたら…お前が、その…美味そうだった」
美味そうではあったけど、ただ落とされただけだし、正直別にお腹は空いてない。でも…会えたのは嬉しい。できればこのままベットまで持っていきたい。
「…精気食べに来ただけ?だったら帰って欲しいな」
そこから何を言っているか分からなかった。帰って欲しい。確かに身勝手ではあるが外で大人しく待っていたからギュッて抱きしめて欲しい。まだ、腕しか触っていない。
「…い、やだ」
「や、やだって…無理だよ。俺には俺の予定があるし」
「やだ」
抱きしめたくて、抱きしめて欲しくて、目の前に立った。その時の顔の変化は見逃さなかった。強ばった。じっと俺を見てくる。やっぱり…淫魔は淫魔でも女の方が良いのだろうか。こいつも男だし、女が…でも、希望を捨てきれない。捨てたくない。
「…お前は、女の方がいいか?」
「へ?」
「女じゃないと嫌なのか…?」
「ん…できればそうだね。女の子がいいかなぁ、硬い身体じゃなくて柔らかい身体の…」
そこまで言われてわかった。俺には、チャンスがない。そうか、そっか…ダメなのか。わかったと返事をして淫魔界に帰る。ハレビールに報告しよう。ハレビールはよかったじゃないか。と言ってくれるかもしれない。最後に…抱きしめるだけでもしてこれば良かっただろうか…まだ身体がひえひえとしているが、身体を誰かと重ねる気はしなかった。
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