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もうすぐ夜が明ける。
開いた窓の外から、冷たい朝の空気が流れこんだ。
今ごろ彼女は、どうしているのだろう。
枕元の携帯を見ようとして、点滴のチューブが絡まる。
薄暗い部屋で静かに落ちるづける滴が、小瓶の中でさざ波を立てた。
『会いたい』
そう打ち込んだだけのメッセージに、彼女はどう思っただろう。
光る画面の文字に指を滑らせた。
『会いにきたよ』
不意に画面が光って、新しい文字が浮かびあがる。
続けて送られてきたのは、この病院を外から撮った画像だった。
『面会時間まで、ここで待ってるね』
俺はベッドから飛びきる。
体温が一気に沸点まで上昇する。
窓から外を見ようとして、ガタンと俺を引き留めたのは、長く透明なチューブだった。
迷わずそれを引き抜く。
もう待ってはいられなかった。
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