いつかの君と

3/3
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
『彼女』の計らいでカーテンを開けていてくれた。 満月がとても美しく輝いている。 1時間だけ過去に行けるのならば…… 懐かしい自動車の往来、時を告げる鐘の音 この道は……覚えている あの坂を登って左へ曲がると潤さんと私の家がある。 行かなくちゃ!走り出した私… 髪が風になびく、なんて軽いのだろう 夢にしてはハッキリと見える 夢?…… 息を切らし家に入る…昔のままだ 妙子は動揺していた (まさか過去に行けたの?) カレンダーを確認する……夢なのか?過去にいる。 だとすると…1時間しかない!潤さんは?潤さんはどこ? 落ち着け!落ち着け!潤さんならどこにいるのか分かるはずよ。 妙子は走った。解る限りの場所を走り回った。 後10分……もう会えないの?!心が挫けそうになる。 「妙子~!」 今、潤さんの声が……どこ?どこなの? 橋の向こうから愛する人が走ってくる 妙子も走る 「はぁ、はぁ、妙子!会いたかった!」 「……潤さん、私も会いたかった…夢じゃないのね…潤さんの手も本物だわ」 「当たり前だろ?!探したよ…妙子が来ると知っていたから」 「……え?!」 「僕は……僕は何年後かに記憶が無くなってしまうのだろ?」 「なんでそれを……」 「妙子が過去に来る事を知っていたんだ。ある人が教えてくれたんだ。僕がどうなるのかも…」 「ある人って?」 「時間がないんだ。今はそんなことどうでもいいんだ。妙子!君に伝えておきたいことがあったんだよ。記憶がなくなる前に伝えておきたい事が…」 「潤さん……私も」 「僕は何度生まれ変わっても必ず君を探し出して一緒になるよ!どんな僕になっても僕は妙子を愛してるから。ちゃんと妙子の声は聞こえているから…」 潤は妙子をギュっと抱きしめた 「潤さん……私も……」 忽然と消えた潤 煌々と灯りがついているような…ここは……? 「主任!バイタル下がってます!ドクターに……ああ、どうしよう!もっと早くに気づいていれば……」 「新人!ドクター呼んでくるから酸素2Lだ!」 「うっ……うっ……は…い」 (泣かないで、私本当に幸せだったのよ) 「妙子さん!妙子さぁぁぁん!いやだぁ!いかないで……」 最後の力を振り絞り『彼女』の手に触れる 「あ………り…………が……と」 「妙子さん!妙子さん!いっちゃいやだぁ!」 バタバタとドクターが入ってくる。首を振るドクター 潤さん!やっと本当にやっと会えましたね。 一緒に行こう、迎えに来たよ。 はい、貴方と共に…… 「母さん…………何も父さんの三回忌で逝くなんて」 潤さん、桜吹雪が綺麗ですねぇ 本当に綺麗だね、ほら妙子の髪の毛に桜の花びらが……
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!