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『彼女』の計らいでカーテンを開けていてくれた。
満月がとても美しく輝いている。
1時間だけ過去に行けるのならば……
懐かしい自動車の往来、時を告げる鐘の音
この道は……覚えている
あの坂を登って左へ曲がると潤さんと私の家がある。
行かなくちゃ!走り出した私…
髪が風になびく、なんて軽いのだろう
夢にしてはハッキリと見える
夢?……
息を切らし家に入る…昔のままだ
妙子は動揺していた
(まさか過去に行けたの?)
カレンダーを確認する……夢なのか?過去にいる。
だとすると…1時間しかない!潤さんは?潤さんはどこ?
落ち着け!落ち着け!潤さんならどこにいるのか分かるはずよ。
妙子は走った。解る限りの場所を走り回った。
後10分……もう会えないの?!心が挫けそうになる。
「妙子~!」
今、潤さんの声が……どこ?どこなの?
橋の向こうから愛する人が走ってくる
妙子も走る
「はぁ、はぁ、妙子!会いたかった!」
「……潤さん、私も会いたかった…夢じゃないのね…潤さんの手も本物だわ」
「当たり前だろ?!探したよ…妙子が来ると知っていたから」
「……え?!」
「僕は……僕は何年後かに記憶が無くなってしまうのだろ?」
「なんでそれを……」
「妙子が過去に来る事を知っていたんだ。ある人が教えてくれたんだ。僕がどうなるのかも…」
「ある人って?」
「時間がないんだ。今はそんなことどうでもいいんだ。妙子!君に伝えておきたいことがあったんだよ。記憶がなくなる前に伝えておきたい事が…」
「潤さん……私も」
「僕は何度生まれ変わっても必ず君を探し出して一緒になるよ!どんな僕になっても僕は妙子を愛してるから。ちゃんと妙子の声は聞こえているから…」
潤は妙子をギュっと抱きしめた
「潤さん……私も……」
忽然と消えた潤
煌々と灯りがついているような…ここは……?
「主任!バイタル下がってます!ドクターに……ああ、どうしよう!もっと早くに気づいていれば……」
「新人!ドクター呼んでくるから酸素2Lだ!」
「うっ……うっ……は…い」
(泣かないで、私本当に幸せだったのよ)
「妙子さん!妙子さぁぁぁん!いやだぁ!いかないで……」
最後の力を振り絞り『彼女』の手に触れる
「あ………り…………が……と」
「妙子さん!妙子さん!いっちゃいやだぁ!」
バタバタとドクターが入ってくる。首を振るドクター
潤さん!やっと本当にやっと会えましたね。
一緒に行こう、迎えに来たよ。
はい、貴方と共に……
「母さん…………何も父さんの三回忌で逝くなんて」
潤さん、桜吹雪が綺麗ですねぇ
本当に綺麗だね、ほら妙子の髪の毛に桜の花びらが……
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