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昼下がりの紫藤くん(2)
「机に置き忘れたんじゃない?」
「えっ、それはないよー。今日は忘れないようにバックごと持ってきたんだから!」
そんなに自信満々に言われても。
「あ!そう言えば、バックに入れた記憶ないかも!」
多佳子は少しぬけているところがあり、よくお弁当を忘れてくる。
私が少し多めに作ってきているのは、そんな多佳子にいつでも分けられるように、という私の気遣いだ。鈍感な多佳子は私をただの大食いだと思っているみたいだけど。
「おめでとうございます!今月で5回目のお弁当忘れ達成です!」
残念がっている多佳子を見るとなんだか、からかってみたくなってしまった。
「そんな勲章いらないよー。このサディストがー!」
多佳子が私をポカポカ小突いてくる。なんだか可愛い。
そんなことをしていると、主任がこっちに走ってくるのが見えた。
多佳子は怪訝そうに主任を見てひとこと言った。
「え、まだ何か残ってましたっけ」
私も少し心配になった。多佳子との時間が少なくなると、私の仕事にも支障が出るのだ。
「そうじゃなくて、さっき手伝ってくれたお礼をしようと思って。お昼時間ある?」
何を勝手に、と思ったけれど。多佳子がほいほいついていく訳がない。すぐに断って、、、
「あります!」
くれなかった。
そういえば、多佳子は前に主任について熱く語ってたことあったっけ。
私は、不服そうに主任を見ると、主任は申し訳なさそうな顔をして、多佳子に見えないように「ごめんね」と合図した。
あーあ、仕方ないな。なんてことを考えていると、いつの間にか二人は外に向かって行ってしまっていた。
取り残された私は、仕方なくお弁当を食べようと箸を持った。すると、
「中村じゃん!」
聞き覚えのある声が私を呼んだ。
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