昼下がりの紫藤くん(1)

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昼下がりの紫藤くん(1)

お弁当を開くと、いつもと変わらないレイアウトで並べられたおかず達がいた。 食費を抑えるため、朝の眠気と闘いながら作る事務作業のように作られたお弁当だ。 最初は煮込みハンバーグや春巻といった定番ものから、健康を意識した和風物のお弁当など、様々なテーマを考えて毎日ウキウキしながら作ってたものだけど、入社してから半年も経ってくると、なんだかメニューを考えることすらも面倒になってくる。 最近は忙しいので、帰りが早い日や休日に作りおきをして冷蔵庫から引っ張ってくるものが多くなってきた。これはこれで楽でいいんだけど、なんだか飽きてくるなぁと、ため息が出る。 「鈴城さ~ん。ランチ行かない?」 なんて声をかけてくる同期との会話もなくなってきて、みんなこぞって外に食事に行っている。なんだか寂しいけれど、私には関係ない話。 「早苗ー。やっぱりここにいた」 同じく同期の弁当組の多佳子が声をかけてくる。彼女は数少ない弁当組の一人で、いつも私と昼食をとっている大親友。彼女のお陰でこのつまらない社畜生活に彩りが生まれる。 「多佳子ー!主任の手伝いやっと終わったの?」 「そりゃひたすら頑張って終わらせるよ。昼休憩までなくなっちゃったら体の芯まで社畜になっちゃうもん」 「体の芯までって温泉じゃないんだから笑」 多佳子は時々変なことを言うけど、そのユーモアに何度救われたことか。 「さてと、お昼ご飯にしますか。って、お弁当どこ行ったっけ?」
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