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今日もまた日が沈む。空はもう秋。あんな夕日を何度見たことだろう。
沈む夕日を背に私を抱きしめた彼。
強い抱擁に彼の気持ちが痛いほど伝わる。
「大好きだよ……」
耳元でささやく彼。
「うん……」
軽く息を吐くように、そうつぶやいた私。
でも、私は……。
好きとか、愛してるとか、そんな言葉はもういらない。
永遠に私をつなぎとめる言葉が欲しい。
私はあなたの何? 私はあなたの特別でいたいの……。
「愛してるよ……」
そう囁く彼の手に力がこもるのを感じる。でもそれは永遠の誓いじゃない……。今日、この場だけの想い……。
私って、ひねくれてるのかな。なんか、おかしいのかな……。
自分の気持ちがわからない。彼の気持ちが分からない。
彼の気持ち……。
本当は、分からないわけじゃない。そう、分かってる……。分かっているけど……。彼の気持ちにこたえる勇気がない……。
握りしめた手。彼の背中にこの手を回したら、この気持ちが砕けてしまうから。
私はもう決めたんだ。これで終わりにする。今日で最後にする。
なんで泣いてるの。お別れだから?
違う。自分に酔ってるだけなんだ。ここで、彼と別れて、一人ぼっちになって。
いい思い出だった。
最高の彼だった。
……って、そう考えて、自分を納得させて。
それでおしまい。
もう疲れたの。彼の気持ちを考えてるふりして、自分の気持ちと帳尻を合わせて、都合のいい様に解釈して……。今の瞬間的な自分に納得して、毎日を騙しながら生きていく……。
もうおしまい。そんな自分とは綺麗さっぱり。
全部自分の為だった。そう、それはあなたと一緒でしょ?
だから、私は悪くない……。
あの沈む夕日とともに、昨日までの私ともさよなら。
明日になれば、新しい私がはじまる。
……だから…。もう私に優しい言葉をかけるのはやめて……。
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