僕の片割れと貴女の涙。

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こんな僕にも生きる意味があるのかな。僕には何もない。何もないまま生まれ堕ち生きてきた。何かを探し続ける日々に。飽き飽きしては誰かに近づいてみる。きっとたくさんの人を傷つけてきた。ひとり。またひとり。傷つけてはその人にモザイクをかけ、僕は愛を探す。カタチには見えないのに見える気がして。心など不確かな物を信じないと思っていたのに信じてみたりして。僕はいったい誰なのだろうか。それすらも分からないまま 貴女は僕の前に現れた。奇跡と呼ぶには程遠い。運命とか未来とか。そんな素敵な言葉は似合わない僕と貴女に この世界はなんと呼ぶんだろう。 僕がこの世界に生まれ堕ちたとき 神様がそっと貴女を僕のそばに生んだのかもしれない。僕がひとりぼっちにならないように。この世界の片隅で泣かないように。「ほら、こっちにおいで」って。「こら、そっちじゃないよ」って。僕を呼んでいたのかもしれない。だってそうだろう。この果てしない世界で 何十億人といる中で、あるいは何千年と続く世界の中で、たった一人の。世界でここにしか存在しない貴女の 先祖でもなく子孫でもなく。巡り巡って生まれたこの時間のこの時代の貴女に僕が出会えた。これを人は奇跡と呼ぶんだろう。 「そんな言葉は似合わない」って貴女は笑うけど 貴女が生まれてきてくれたことが奇跡です。
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