小町藤

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 いつになく時間をかけ念入りにかつ濃くならないように慎重にメイクをし、昨夜のうちに用意しておいた落ち着きのある清楚系のワンピースに身を包む。  アクセは派手にならないものを。バッグも大人しめに、靴はヒールがそう高くないものと決めておいた。  鏡の中で見違える様に輝く自分に一度微笑みを作って見せてから両こぶしを握った。 「よし!」  出来栄えは上々そう思えた時、無意識のうちに私の人差指は鼻の頭をこすっていた。  それに気づいて慌ててひっこめる。幼い頃からの癖とはいえ、今日は女らしくない仕草はご法度なのだ。  ちやほやされていた若い頃はそういうのがうっとおしくて愛想笑いと当たり障りのない返事で逃げ回ってきたが、いつの間にかそのお株はすっかり後輩達に奪われ、友人に二人目の赤ん坊を産んだ事を報告されると27と言う年齢をようやく自覚した。  意識しないうちに30という節目が見え始めて居た事実に驚愕し、焦りを感じた私は婚活にいそしんでいたのだ。
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