小町藤

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「それは大丈夫だと思いますけど……」 「そうね、でも人間って思ってもみない時に取り乱すものだもの」 「大丈夫です。そんな子供じゃありません」 「あらあら、私は取り乱してもいいと言ったのよ? 」  老婆はまたくすくす笑った。とんでもない話だ。お見合いの場で取りみだすだなんて。もし私が人生の伴侶を選ぶ場にあって相手がいきなり大声を上げ出したり泣き崩れたらどう考えるだろうか。 「じゃぁ、取り乱したとして、相手はどう思うでしょう」 「困るわね。困って、あなたを放っておけなくなるかも」  どんなお人よしだ!  私はこの老婆のアドバイスはあてにならない事を悟った。 「あなたはとても結婚したいと思っているのね」 「言いにくい事、と言うか言われたくない事ズバリ言いますね……」 「ああ、ごめんなさい。そういうつもりではないのよ。本当に。ただ何って言うのかしら、うまく言えないけど……」  上から目線?なんでここへ来て説教をされなくてはならないのだろう。 「あなたはね?あなたが思ってもみないほど、そう、思ってもみないほどよ、愛される資質を持っているのよ」  出会って間もない人が言う台詞ではない。
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