小町藤

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 「つまりそういう事。良い所を見せようとしないで見せたくない所を見せて良いと思うわ。結婚てそういうものでしょう?仮面をかぶって取り繕って、そんなのよそよそしいったらありゃしません。身内になるって事は、みっともない所を受け入れてもらうことでもあるんじゃないかしら」  だめだ、やはりこの人のアドバイスはあてにはならない。 「でもそう言うのって、ある程度信頼関係が出来上がってからするものではありませんか?初対面でいきなり、そうですね、例えば肘をついてあぐらをかいて座ったりしたら悪い印象しか与えないと思いますけど。そうなったらお見合いどころではないと思います」  彼女はまたくすくす笑った。 「そうね、でもそれは悪い所を見せたのではなくて横柄な態度をとっただけだと思うわ。あなたがそうしたいのであったのならそれはその態度で良いと思うけれど、そうしたい訳でもないのに意図的に良くない態度をとる必要はないわね。そう言うことではないのよ」  たぶん私の眉はいくらかつり上がっていたんだと思う。 「では例えばですが、私がとてもおしゃべりだったとして、自分ばかり延々としゃべり続けて相手の話を聞こうともしなかったらどうですか?休日に捕まえた昆虫について熱く語り始めたら?そんな事をしたらお互いに理解し合う前に拒絶されますよ」  彼女はまだにこにこしていた。 「まぁ、一般的にはね」  そうして一息ついた後こう続けた。
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