小町藤

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「例えばご趣味はと聞かれて、お料理とかお裁縫ですと言えばおおかたの男性にうけは良いでしょうね。あなたの言うように昆虫採集に熱意を持っている事を聞いたらもしかしたら距離を置きたがる人も居ることでしょう。おしゃべりな人を苦手とする人も確かにいるわね。でも……」  たぶんそれは意図的なのだろう、視線を私から通りにはずして静かに言った。 「もしお話を聞くのが好きな方だったら、あなたの楽しげに話す様に喜びを感じるかもしれない。昆虫が好きな男性だったら目を輝かせてあなたの成果に喰いつくでしょうね。あなたがするお見合いと言うのはその先にあるかもしれない結婚を垣間見せるものであるのよ。おしゃべりが嫌いな男性だったらおしゃべりな女性とは一緒に居るべきではないと思うわ。それはきっとお互いが無理をして、結婚の意味をかき消してしまう。虫が苦手な男性だった昆虫採集を許してくれないかもしれないわ。あなたも一緒になった後お相手が猫を被っていただけだったと発覚なんて望まないでしょう? 」  私は頬が紅潮しているのを自覚した。 「確かにそうかもしれません、でもそれは理想論ですよ。全く同じ価値観の人なんていません。違う人間がお互いに寄り添おうとすり合わせて行くのも結婚なんじゃありませんか? 」
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