小町藤

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 そう言えば人を待っていると言っていたな。どんな人なんだろう。  そんな事を思った時、彼女はやや瞳を開き、口角をそれとわかるようにあげた。  来たのだ。  そう思った私は彼女の視線の先を追った。  サラリーマン?  スーツ姿でちょっと背の高い男性がなんだかよれよれになって走ってくる。  肩で息をしているのがここからも見えるのでかなりの距離を走ってきたに違いない。どうやら向こうもこちらを見つけた様でぱっと表情を輝かせさらに加速した。 「遅刻……ですか? 」  彼の急ぎように思わずもれてしまった。 「いいえ、間に合ったわ」  彼女はにっこりしながら満足げに人差し指で鼻の頭をこすった。  次の瞬間おばあちゃん!と彼の声がすぐ近くで響いた。その声に彼女はさっきはどうもと微笑んだ。 「よかった~おばあちゃん。やーっとみつけた……」  肩で息を弾ませつつ彼はやや大きめの声でそう漏らした。 「喫茶店探しているって言ってたでしょ?すごく急いでいるって。ごめんね、さっきは~駅の方向教えるしかできなくて」 「いいんですよ。飛びだした猫は大丈夫だった? 」   「なんとか獣医に連れて行きましたよ。大した怪我じゃないって。それよりほら、と~っても大事にしているって言ってたお守り!おとしたでしょ! 」  男性は内ポケットから熊のマスコットをとりだした。
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