小町藤

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 今日会う見合いの相手は一流企業のそこそこのポストで、私よりも7つ年上だが趣味も多彩な上、容姿も割と良く、年齢より若く見える優しそうな人だ。バツイチである事を除けば非常に良い条件だと思う。  そんな相手が私に興味を持ってくれたというのだから相談所というのはわからないものだ。  決して失敗する訳にはいかない。是が非でも気に入ってもらい、次に繋いでいかなくては。  ハンカチ、化粧道具、携帯電話、財布、それらをもう一度小さなバッグの中に確認する。あっと、これを忘れてはいけない。 小さな頃からの守り神、高校大学両受験の時も、就職試験の時もバッグの中から私に良い結果をもたらしてくれてきた手製のしろくまのマスコット。 それを小さな内ポケットに忍ばせ私は立ち上がった。  何かアクシデントがあっても待ち合わせの時間に充分間に合うように1時間の余裕を見て家を出る。  踏み出した降ろしたての空の下はまだ昨夜の雨の香りが残っていたが、すっかり磨かれた空気の中を通る陽光はいつも増して輝いていた。
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