小町藤

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 こちらが聞きもしないのに彼女は穏やかに、そして楽しげな様子で世間話を始めた。  それは手入れしている花壇に花が咲いたのだとか、ナナホシテントウが可愛らしかっただとか、私がにしてみればどこが面白いのだかわからない内容の話からだったが、次第にそれは彼女の旦那さんの話になっていった。  なんでも付き合った期間はとても短かったのにすぐ結婚を決意したのだそうだ。  ろくに相手の事も知らずによく決めたものだと思ったが、私も人のことは言えないのかもしれない。  夫の事を話す彼女はいくらか若返ったように見えるほど顔がほころび、その声には思慕の念が滲みだしてた。苦労なんて何もなかったのだろう……。 「良い旦那さんに恵まれましたね」  私がそう言うと老婆はあなたもそう思う?とさらににっこりした。 「本当にそうだわ」  言った後さらに同じ言葉を繰り返した後、彼女はあの人でなかったらきっとここまで幸せにはならなかったでしょうね、と少しだけもの思いにふける表情を浮かべた。 「あの人ったら本当に損する性格でね?ウフフ、ばかな人だなぁって思うことは何度もありました」  そう言って少女の様にくすくす笑った後私に目を合わせて「そこがいいのよね」とさらに笑った。
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