小町藤

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 彼女を見ていると結婚しなくてはという焦りが若干馬鹿らしく思えて、なんだか自分が見ているベクトルがどこかちぐはぐで色あせて見えた。  とは言え、現実問題いつまでも白馬の王子を待っている訳にはいかない。そもそも誰にでも王子が居るとは限らないし、誰でも彼女の様な最高の相手を見つけられるとは限らないんだ。年齢が上がればそれはなおさらだ……。  私は少しだけ悲しくなったがいわゆる女の幸せというものをまるまる手放す気はない。 「私も早く結婚したいです……」  漏らした後顔が熱くなった。ついとは言えなんてみっともない事を漏らしてしまったのだろう。 「そう、お幸せにね」 「相手はまだいないんですよ」  私は自虐的に言った。 「だから今日お見合いするんです」  彼女はまた小さく笑った。 「お見合いなんてしなくても旦那さまには出会えますよ」  それはうまい事恋愛結婚に成功した人の理屈だ。  私は相手にわからないように笑顔のまま小さく唇をかんだ。 「誰よりも素敵な相手にめぐり合うわよ」  老婆はもう一度笑った。  なんだか無責任な物言いに私はちょっとだけ苛ついた。  これからお見合いに向かおうって言う不安からもあったが、勝利宣言をされたようでなんだか嫌だったのだ。  よく考えたら道案内をしてあげているのに何十年分ものおのろけを聞かされている訳なのだ。
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