第二の春

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嫌な予感は的中するものだ、、、。 買い物カゴに、白菜やら豚肉やら次々と入れて楽しそうに、カートを押す浩介。 ここは、馴染みのあるスーパー。 よく私は買い物に来る、、、。 ここのスーパーに来た、、、という事は、、。 もうすでに、ちいちゃんもこれからどこに行くのか見当が付いたらしく、、、。 「浩介、この鍋にするー?どれにするー?」 と、楽しそうに鍋のスープを選んでいるちいちゃんの姿を見て、がっくりと肩を落とす私。 、、、嘘でしょ? 誰か、嘘だと言って、、、。 会計を済ませて、スーパーを出る。 2人は、両手いっぱいに、具材やらお菓子やらジュースやら入った袋を持って、楽しそうに会話をしながら、すぐそこの目的地に向かって歩く。 2人の後ろを、逃げ出したい気持ちを堪えて、ゆっくりついて歩く私、、、。 目的地は、、、やっぱり、、ここか。 はぁ、、、。 ため息をこぼしても、もうここまで来てしまったんだ、、、。 仕方が無い、、、けれども。 なんで、ここ!?!? 見えてきたのは、馴染みのあるアパートで、、、。 馴染みのある車が止まっている。 ピンポーン、ピンポーン!! と、勢いよく、チャイムを鳴らす浩介。 ガチャっと、ドアが開く。 「なんだよ、うるせぇな。」 そう言って、ドアから不機嫌そうに顔を出したのは、、、。 「オッス!!おっじゃまー!!鍋するぞ!鍋!」 「お邪魔しまーす!あー、やっぱり渚に電話しよっかなー!みんな集まるの最後かもしれないじゃん?」 ワイワイと、家の主の横をスルーして、部屋へ入っていく2人、、、。 「おい!何勝手に入ってんだよ!ったく、、、。」 主は相当ご機嫌ナナメな様子で、、、。 1人取り残された私に向かって、ため息をついた。 そう、、ここの家の主は、、、先生だ。 「川合だけじゃなかったのかよ、、、。」 「浩介と街で偶然会って、、、。浩介、合格したから、祝えって、、、。」 「、、、あいつ受かったのか。それにしても、、ったく、何考えてんだ、あいつは。」 2人の勢いに圧倒されて、苦笑いしつつ、家の主さんの顔色を伺う私。 「、、、なんで、こんな事になってるんだろう、、ね?」 「俺が知りてぇよ。」 呆れ顔の先生。 玄関から唖然としながら、楽しそうな浩介とちいちゃんを眺める。 本当。 なんで、、こんな事に、、、。 「ごめんね?止めればよかったよね?」 私が、そう言うと、先生は、仕方ないと言う顔をしながら、、、。 「合格祝いなんだろ。本当にいい友達持ったな。ったく、、、。早くおまえも中入れ。」と、中へ入れてくれた。 テーブルを囲んで、スーパーの袋から買った物を取り出してる浩介とちいちゃんは楽しそうだ。 「今から渚来るってー!」 ちいちゃんが嬉しそうに言う。 「渚も呼んだの!?」 まさか、渚まで来るなんて、、、。 「うん!大勢いたほうが楽しいじゃん!鍋は!」 はぁー、、、っとため息が溢れる。 「ところで、この家鍋あんのか?コンロと!」 浩介が、具材を出しながら聞く。 スーパーで買い物をしている時点で、まぁ、鍋もコンロもあるから、、、と諦めてはいたけれど、もし無かったらどーするつもりだったんだろう、、、。 本当に無鉄砲すぎて、呆れてしまう、、、。 「、、、おい。おまえら、鍋があるかどうかもわからねぇのに、鍋するってどーゆー発想だよ、、、。おかしいだろ、そこからして。」 呆れた顔をしている人がもう1人、、、。 「普通あるじゃん!あるんだろ!?響!」 と、当たり前のように浩介が私に聞く。 なんで、私に、、、。 呆れた顔をして立ち往生している私の肩に大きな手がポンと乗る。 「仕方ねぇから、用意してやれ。」 がっくりと肩を落とす私。 コンロと鍋を用意して、買った具材を台所に運ぶ。 「ちいちゃん、野菜切るから手伝ってー。」 「うん、やるやる!!」 いつものように、包丁と、まな板を取り出して、準備を着々とする私。 そんな私を、ちいちゃんが興味津々にじーっと見つめている。 「響、自分の家みたいだねー。」 !!!! ちいちゃんの言葉に顔が赤くなる。 「このタイマー可愛い!食器も可愛いじゃん!こんな可愛い台所じゃなかったじゃん!」 「、、、そうだっけ?」 とぼけてみせるけれど、ちいちゃんのアンテナは鋭い。 「響、野菜切るの上手!料理とかしてるの!?」 「、、、まぁ、たまに、、、ね。」 ちいちゃんに色々聞かれて、恥ずかしくなる。 だけど、もう、恥ずかしいなんて言ってられない。 居間には、浩介と一緒にTVを見てくつろいでいる先生の姿が見える。 もう、仕方ない。 色々隠しても、ちいちゃんと、浩介には気付かれてしまう気がする。 いつも通りにしてよう、、、。 半ば諦めの気持ちで、お皿と箸を用意する。 切った鍋の具材をテーブルに置き、お皿を並べて、コップを並べて、、、。 「おー!うまそーじゃん!!。早く買おうぜ!」 無邪気にはしゃぐ楽しそうな浩介。 、、、なんだかなぁ。 まぁ、合格のお祝いだから、、、仕方ない、か。 そこに、ピンポーン!と、新たにお客さんが来る。 「あ!渚きたー!!」 ちいちゃんが玄関先まで出迎えに行く。 「ったく、うちは何なんだよ、、、。おまえらの集会場所かよ、、、。」 呆れ顔でタバコを吸う先生の横顔を見て、苦笑いをする私。 「ちわーっす!!おじゃましまーす!浩介さん合格したんですか!?」 渚が驚いた顔をしながら居間へ入ってくる。 「おおー!!受かったぞー!だから、今日は俺の合格祝いだ!!いやー、みんな集まってもらって悪いねー!」 「落第しなきゃいーけどな。よくいるから。東大入ったはいーけど、ついていけなくてすぐ辞める奴。」と、浮かれた浩介に釘を刺す先生。 「なにぉー!?俺は卒業するって決まってるんだ!」 「どーだか。まぁ、受かってからが勝負ってとこだな。」 「せっかくの合格祝いに水を差す事言いやがって!!」 浩介の頭に血が昇ってきたところを、必死に押さえる渚。 「まぁまぁ!!浩介さん!せっかくの合格祝いなんすから!!落ち着いて!!」 「そーだよ!浩介!鍋冷めちゃうよー!早く食べようよ!」 ちいちゃんは、目の前の鍋を早く食べたい様子だ。 ワイワイとみんなが集まって、いつもの顔ぶれが揃うと、高校生に戻った感覚だ。 、、、こんなだったなぁ、、、。 みんな揃ったところで、鍋を囲んで、ジュースで乾杯をする。 「浩介!東大合格おめでとー!!」 「どーも!いやぁ、悪いね!」 「もう、浩介絶対落ちたと思ってたー。ねー、響。」 「、、、うん。」 確かに、、、。浩介には悪いけど、受かるとは思っていなかったのが正直なところだ。 「4月から東京行くんすかー?いーっすね!東京!」 渚は、東京という都会に行く浩介を羨ましがっている。 「はっはっ、俺がやる気出せばこんなもんよ!!」 終始浮かれている浩介。 本当に勉強ついていけなくて、辞める事にならなきゃいいけれど、、、。 先生は、もうこの事態を諦めたようで、私たちの会話をスルーして、TVを見ながら、黙々と鍋を食べている。 「じゃあ、もうみんなでそんなに集まれないんだねぇー。」 ちいちゃんが、少し寂しげに言う。 「そーっすね、、、。東京だもんなぁ。浩介さん、簡単に帰ってこれないっすもんねー。」 渚もちいちゃんの言葉に反応して、少し寂しげに続けた。 「俺?帰ってくるに決まってんじゃん!!二か月に一度は帰ってくるぜ?」 え!?!? 二か月に一度!?!? 浩介の言葉にみんなびっくりする。 「なんで、そんな頻繁に帰ってくるのー?」 ちいちゃんが聞く。 すると、すかさず、先生が核心を突く言葉を放つ。 「お隣さんがいるからだろ。」 絶句している浩介に、追い討ちをかける先生。 「なんなら今呼べばいーんじゃねぇか?」 そう言って含み笑いをする先生を見て、浩介は焦り顔をする。 「いーんだよ!伊藤も余計な事言うなよ!いーから鍋くうぞ!!」と、話を逸そうと必死に鍋に食らいつく浩介。 なるほど、、、。 そうか、、、だから、二か月に一回帰ってくるのかぁ。 なんだかんだ言って、浩介もうまくいってるんだなぁ、、、。 こうやってみんなが揃うと、本当に高校時代を思い出すなぁ。 先生がいて、みんながいて。 こうやって先生の家に集まったりして、、、。 1年経っても、みんなが揃うと、なんだか変わらないなぁ、、なんて思ってしまう。 鍋も食べ終わり、浩介がゲームをし始める。 「渚、対戦しようぜ!!」 慣れたように、ゲームを取り出し、まるで我が家のようにくつろぎ始める浩介を見ていると、この一年、どれだけ先生の家に通っていたのかが、よくわかる。 渚と浩介がゲームをし始めて、ちいちゃんと茶碗洗いをしていると、ふらりと、先生が台所へやってきて、私に声をかける。 「悪い、コーヒー淹れて。」 「わかった。この前買った豆でいい?」 「ああ、いーよ。」 「みんなも飲むかなぁ?」 「どーだろな。多めに淹れていーよ。残ったら明日の朝、俺飲むから。」 「わかった。」 そんな私たちのやりとりを見て、ちいちゃんが、顔を赤くしている。 ??? 「どーかした?ちいちゃん!」 ちいちゃんは顔を赤くしながら、少し興奮気味に答える。 「だってー!なんか普通のカップルに見えるんだもーん!!」 !?!? 先生もその言葉を聞いて、呆れ顔をしていて。 「なんだそれ。」 と言って居間へと戻っていく。 「響、伊藤とラブラブなんだね!」 「、、、ラブラブって、、、普通だよ。」 ちいちゃんの言葉に顔が赤くなる。 ラブラブ、、、なのかなぁ? そう見えるのかなぁ??
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