第二の春

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「浩介さん!それずるいっすよ!!」 「おまえ、下手すぎ!!次、伊藤勝負しよーぜ!!」 「、、、やだよ。渚とやってろよ。」 今度はテーブルにお菓子を広げて、ゲーム大会になりつつある先生の家。 「なにがそんなに面白いんだろーねー。ゲームつまんなーい。」 ちいちゃんは、手持ち無沙汰のようで、お菓子を食べながら、不服そうにゲームに夢中な渚と浩介を見ている。 先生は、クッションを背に、ゲームの画面をぼーっと見ていて、まったりとした時間が流れる。 「おまえら、もうそろそろ帰れば?」 先生が、時計を見て言った。 時計は9時を過ぎている。 「そーだねー。渚ー、もうそろそろ帰ろっかー。」 ちいちゃんが渚を誘って帰り支度を始める。 「そーっすね。もうこんな時間っすもんね!そろそろ俺ら帰りまーす。」 渚もちいちゃんに誘われて、帰る準備を始めた。 「えー!おまえら、もう帰んの??俺、もう勉強しなくていーし、明日日曜だぜ?俺、まだまだ大丈夫なんだけど!」 浩介は、ゲームのリモコンを離そうとしない。 「何が大丈夫だよ。おまえ、これからどんだけ勉強しなきゃならないのかわかってんのか?。受かってからが勝負なんだぞ?わかってんのか、おまえ。」 先生が教師の顔になると、早速さとリモコンを置いて帰り支度をする浩介。 「説教なんて、聞いてられっかよ!俺もかーえろっと。」 省みの速さについ笑ってしまう。 「おー、帰れ帰れ。」 先生は、淡々と浩介に帰るように言っている。 「響も帰るー?」 ちいちゃんに聞かれて、少し考える。 急に来たから先生疲れてるだろうしなぁ。 今日は試験の資料を作るって言ってたから、会うのをやめていたのもあるし、、、。 ゆっくりしたいかも、、、。 「うん。帰るよ。」 コートを取ろうとした時、肩にポンと手が乗る。 「おまえはダメ。」 先生が私の肩に手を乗せて、帰ろうとする私を止めたんだ。 !!! え!?!? そんな先生を見て、浩介が声を上げた。 「なんだよ!それ!伊藤ずるくね!?俺たち追い出して、自分だけいい思いしよーとしてんじゃん!」 そんな浩介の声も全く気にしない様子の先生。 「何とでも言え。」 「なんだよ!それ!!教師のする事かよ!」 浩介にとっては、相当気に入らなかった様子で、、、。 わめく浩介を先生は、一言で黙らせてしまったんだ。 「教師じゃねぇよ。こいつの彼氏。」 「!!!!」 浩介が、悔しそうな表情をする。 先生の言葉に赤面してしまう私。 「まぁまぁ、浩介さん、この場は仕方ないっすよ!さぁ、帰りましょう!!」 「そーだよ!響もラブラブしたいもんねー?大丈夫!響のママには電話しといてあげる!!」 え!!ちいちゃん!? 驚く私に、ちいちゃんは、意味深なウインクをして、合図する。 浩介も、ちいちゃんと渚になだめられ、渋々と、口を尖らせながら玄関へと向かう。 「じゃあ!先生、お邪魔しましたー!また来るねー!!じゃあ、響、またね!」 「どーもっす!!じゃあまた!!」 ちいちゃんと、渚が私達に手を振って玄関を出て行く。 「ちっ!まだゲームの途中なのに、、、。まぁ、また来るわ!」 そう言って渋々2人の後に付いていく浩介。 あれ? みんな帰っちゃったけど、、、。 私、ここにいていーのかな? みんなを見送り、ドアを閉めた後、玄関先で、先生の顔を覗き込んだ。 「ん?」 先生も、私の顔を見る。 「、、、疲れたでしょ?。私も帰るよ?」 なんだか申し訳ない気持ちになりながら、先生の顔色を伺った。 「おまえ、この後なんかあんのか?」 「、、、ないけど。」 「なら、いーだろ。千草もあー言ってくれたんだし。泊まっていけば?」 「え、いいの!?」 急な展開に、嬉しくなって聞き返すと、先生はふっと笑う。 「いーだろ。俺だっていい思いしたいし。」 そう言って、悪戯っぽく笑う先生の顔を見て、胸がキューっとなる。 「あー、疲れたな。」肩肘を曲げて伸びをしながら、居間へと戻る先生。 その後について、私も居間へと引き返す。 「疲れたでしょ?急に来ちゃってごめんね?」 先生はクッションを背にして、座り込み、両手を広げて「こっち」と私を呼び寄せた。 先生の腕の中にすっぽり包まれる私。 「疲れたから、充電させて。」 そう言って、ぎゅっと抱きしめられる。 充電って、、、。 そんな事を言う先生に、つい笑みがこぼれる。 「みんな揃うと高校生に戻ったみたいだったよ。」 「そーだな。あんなんだったな。」 「みんな変わらないよね。」 さっきの光景を思い出すと、ついふふっと笑ってしまう。 「俺たちは変わっただろ。」 後ろから先生が言う。 変わったのかな? 確かに、あの頃より、ずっと近くに先生がいる。 確かに、一年前は、こんなに自然に触れ合えなかった。 先生との距離が近くなったんだなぁ。 「そうだね。高校生の時よりも、ずっと幸せだなぁ。」 そう言うと、先生の顔が近づく。 自然に触れ合う唇。 高校生の時よりも少し大人になった私。 触れ合うと、まだまだドキドキするけれど、こうやってキスをする事も、自然なんだと思えるようになってきた。 先生といると、好きだなぁって、心が温かくなるんだ。 先生もそうだったらいいな。 そう思いながら、深く目を閉じた。
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