第二の春

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「今日だよね?」 「うん、、、」 「どーだったんだろーね。」 「どーだろうね。」 「連絡してみる??」 今日は国公立の大学の合格発表日だ。 ちいちゃんと待ち合わせをして、街をプラプラした後、カフェで一休みしているところだ。 「連絡してみようか?」 ちいちゃんが、携帯を片手に迷っている。 そう、今日は浩介の東大合格発表の日だ。 もう、きっと浩介は結果を知っているんだと思うけれど、、、。 全く連絡が来ない。 嫌な予感がする、、、。 去年の今頃、浩介は受験に失敗して、浪人生活を送る事を決めたんだ。 この一年、浩介が予備校に通いながら勉強していたのは知ってる。 高校時代よりも頻回に遊んだりすることは減っていて、誘っても勉強中と言って来ない事もしばしばあって。 きっとここ最近はラストスパートで猛勉強していたんだろうけど、、、。 合格発表の日に連絡が来ないのが、なんだか嫌な感じだ。 浩介の事だから、受かったなら、連絡くるはずだけど、、、。 でも、来ないという事は、、、。 「ちいちゃん、、、電話来るまで待ってみようよ。」 ちいちゃんも、同じ予感がしていたようで、 「、、そうだね。」と、携帯をテーブルに置いた。 受かっているといいけれど、、、。 「ちいちゃん、そろそろ帰ろっか。」 「そーだね。」 なんだか、気持ちが落ち着かないまま、カフェを出る。 駅まで歩いていると、後ろから聞き覚えのある声で呼びとめられた。 「よお!おまえら何してんの?」 !!!! 振り向くと、そこには、浩介が立っていたんだ。 「浩介!?!?なんでいるの??」 たいちゃんが目を丸くしている。 「そこのレンタル屋行ってた。店出たら、目の前におまえら歩いてるの見えたからさぁ。」 そう言う浩介は、レンタルショップの袋を手にしている。 「!!!超偶然じゃん!!びっくりしたー!」 ちいちゃんが驚いている。 「なに、おまえら買い物?」 「街プラプラしてただけー。ねー、響?」 「あ、、うん。」 合格発表の日に、レンタル!? 、、、一体何を!? 浩介はいつも通りで、その表情からは、全くわからない。 合格したの? それとも、、、。 聞いていいものだろうか、、、。 躊躇していると、ちいちゃんが、お構いなしに浩介に直球を投げ込んでしまった。 「浩介、今日発表じゃん!どーだったの!?!?」 !!!! ちいちゃん!! 確かに気になるけれども、、、。 ドキドキしながら浩介を見る。 すると、浩介は私達の顔を見て、ニヤッと笑った。 「なに、おまえら心配してくれてたわけ??」 「そーだよ!連絡ないからさぁ!落ちたんじゃないかと思ってたんだよ!ねー?響!」 ちいちゃんに目を向けられ、「、、うん、まあ。」と答える。 「で、どうだったの!?」 ちいちゃんが浩介に詰め寄る。 すると、浩介の顔が急に、暗く陰った。 「、、、ダメだった、、、。」 そんな浩介を目の前にして、ちいちゃんと目線を合わせる。 暗く、どんよりとした嫌な空気が流れる。 ダメ、、だったんだ、、、。 そっか、、、。 「、、あ、まぁ、今年がダメでも、、ねっ!響!!」 「あっ、うん!そーだよ。来年もあるし、、、。」 重い空気に押しつぶされそうになりながら、なんとか空気を変えようと、必死に言葉を選びながら励ます私とちいちゃん。 そんな私たちを見て、浩介は、吹き出して笑い出した。 「ぷーっ!!あはは!!!おまえら、バカじゃん!」 え!?!? 何!? 「俺が落ちるわけねぇだろ!!この俺が!!」 コロっと急に表情を変えて、ニカッと笑う浩介。 「なに、騙したの!?信じらんない!!」 ちいちゃんが浩介に噛み付く。 「浩介、受かったの!?!?」 私も事態がよくわからなくて、聞き返してしまう。 「当たり前だろ!おまえら、俺がこの一年どんだけ勉強漬けの毎日を送ってたと思ってるんだよ!受かって当然だっつーの!」 そう言って、偉ぶる態度を出す浩介。 いつもの浩介だ、、、。 「すごいじゃん!!東大でしょ!?本当に!? 受かったんなら、連絡してよーー!!」 ちいちゃんが信じられないといった顔をしている。 「、、、すごいね、、。本当に受かったんだ、、。」 私も驚きを隠せない。 「おまえら凡人とは格が違うんだよ!」 そう言う浩介に、歯向かう気持ちも無くなる程に、本当にすごいと感心してしまった。 「そーだ!お前ら、今から合格祝いしろ!」 浩介が、急に思い立ったように言い出す。 は? 合格祝い!? 「うちら、今から帰ろうと思ってたんだけど、、、。」 何を言い出すかと思えば、、、。 「そーだよ!いきなり祝えって何それ!!」 ちいちゃんも呆れている。 もう、日も暮れかかって、寒さも増してきた。 2月の寒さは肌に突き刺さる。 「いーじゃねぇか!明日日曜だし、休みなんだろ?俺腹減った!ちょっと付き合えよ!」 浩介は、私達の言う事を無視して話を進めていく。 「えー!今からぁ??」 ちいちゃんがむくれている。 「なんだよ、おまえ、大事な友達が東大合格したんだぞ!!祝おうっていう気持ちはないのかよ!もっと喜ぶべきだろ!!」 、、、また始まった。 いつもの浩介だ、、、。 「どーするー?響。」 ちいちゃんが困った顔をしながら聞いてくる。 まぁ、、、受かったんだし、、、。 確かに、おめでたい事だから、、、。 「いいよ。祝ってあげよう、ちいちゃん。」 諦めの気持ちで、ちいちゃんに呟く。 ふうっと小さなため息が溢れた。 浩介は、ニヤッと笑って、携帯を取り出し、誰かに電話をし始める。 ???  「あ、俺だけどー、今から行っていー?いーよなー?じゃあな!」 電話で、そう勢いよく一方的に話した相手が誰なのか、、、。 なんだか嫌な気がしてならない。 「よし!決めた!鍋しよーぜ!鍋だ!寒いし!鍋食いたくなった、俺!」 電話を切ると急に浩介が言い出す。 !?!? 鍋!?!? は?? 「ちょっと、浩介!鍋って、どこで!?」 先に歩いて行こうとする浩介の腕を掴んで、とっさに聞く。 「いーから、いーから。早く材料買っていこーぜ!!」 ルンルン気分の浩介に、もう何を言っても無駄なのはわかっているけれど、、、。 嫌な予感がする、、、。 「ちょっと待ってよー!浩介!」 ちいちゃんが小走りで、浩介の後を追っていく。 え!!?!? 鍋!? どこで!? 、、、まさか!!!
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