予報はずれの夕方

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俺はかなり戸惑っていた。 風が心地よく吹き、噴水の周りで子供たちの無邪気な声が響く公園で、夕方というにはまだ早い平日の平穏な時間帯に、俺はそれどころではない状況に混乱していた。 誰かこの事態に対応できる人はいないのか! そう困惑しても、俺の目の前で、事態は収束しない。 少女が泣いていたのだ。 それはもう紛うことなき、号泣だ。 それだけなら、まだいい。迷子だろうが、何だろうが保護者に引き渡せばいい。 ただ、言いたい。 なぜそんなところにいる? なぜ……ダンボール箱の中に入っている? 拾ってくださいとでもいいたいのか? 捨て犬ならぬ、捨て(びと)なのか? 疑問がぐるぐると俺の思考を奔走(ほんそう)する。それでも解決策など思いつかない。 さて、なんて言えばいい? 俺は目の前で、号泣しながらダンボール箱にうずくまる少女に、いったい何を伝えればいい? 『あの、捨てられたんですか?』とでも言えばいいのか? あほか! そんなわけがあるか! それに、この状況にも関わらず、俺以外、誰も心配してやってこないのも腹立たしい。正義感というか、責任感というか、人として困っている人がいれば、助けようと思うのが人間なのではないか! 見てみろ。ここに、クリーム色のベレー帽を被り、レースで縁取りをした白い襟を組み合わせた茶色の服を着ている少女がいる。おそらく、統計的に可憐と言われる部類の少女だ。 そんな少女が泣いている。号泣している。これを放っておくとはどういった了見なのか、教えてほしいところだ。 いや、今、そんな細かいことに憤りを感じている場合ではない。 ここまでの思考で、1秒が経過した。少女がダンボール箱の中で号泣しているのを発見して、彼女の真ん前に立ってから、1秒だ。
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