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あまりに他が気になりすぎて、私、彼の〝あの時も〟という不自然な付け加えに反応できていなかった。
後で考えたら、まさにそれこそが御神本さんの私への〝餌付け〟の原点だったみたいなのに。
***
自分で言うのも何だけど、私、そんな人様から一目惚れしていただけるような恵まれた容姿はしていないと思うの。
性格だってこの通りガサツで食いしん坊だし、とてもじゃないけど御神本さんクラスのハイスペック男性に好かれる要素は皆無だと思う。
なのに――。
「第一は顔だな。俺は自分自身が思っているより、ずっと強くキミの見た目が気に入っているらしい」
え!?
嘘でしょう!?
人の好みは十人十色って言うけれど、御神本さんは随分と奇特な目をお持ちのようです。
「あとは……やっぱりその食いっぷりだな。考えてみればあの時もそうだったが、何でも美味そうに食べてくれるし、何を食わせても幸せそうな顔をする。見ていて実に清々しいよ。顔のつくりもさることながら、いまの俺はそっちに強く惹かれているな」
って……うそ! そこ!? そこなの!?
だからですかっ? 次々に美味しいもので私を誘惑してくるのはっ!
でも……。
ということは……安心して美味しい思いをしてもいいってこと!?
「わーい!」と心の中で諸手を上げて喜んでから「あ!」と思い至る。
ダメだっ。
御神本さんから離れたいなら、餌付けに歓喜して、彼の性癖を満たしたらいけないんだ!
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