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ひぃー。お願い! 今は黙ってて!! 私のお腹の虫! あとで草でもなんでも放り込んであげるから!
ぶわりと耳を熱くして、慌ててお腹を押さえてうつむいた私の頭上へ、クスクスと笑い声が降ってきた。
顔を上げなくても分かります。
御神本さん、笑ってらっしゃいます……よね?
「とりあえず話の続きは食事でもしながらどうかな? 実は、俺も夕飯まだなんだ」
言われて私、思わず条件反射で顔を上げて、目をキラキラさせてしまった。
ううう。
腹ペコが憎い。
「そ、そ、そ……。その手には乗り……」
――ません!
それでも生唾をグッと飲み込んで、何とかキッパリ断ろうとしたら、
「何がいい? 寿司か? ステーキか? それともフレンチ? イタリアン? なんでも花々里が望むものを食わせてやろう」
って本当ですか!?
「――ます!」
結局、飢えたお腹の虫に意識を乗っ取られた私は、〝乗りません〟と言えずに、〝乗ります〟と路線変更してしまった。
あ、あくまでも言わせたのは「お腹の虫」です。私じゃありません。
でも私、「お腹の虫」の気持ちも少しは分かるのよ?
だってだって!
お寿司よ!? お肉よ!? フレンチにイタリアンよ!? 断れるわけないじゃない?
思わず口の端にヨダレが滲んできて、慌てて唇にグッと力を込めた。
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