3.なし崩し的にというより飯崩し的に

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 あーん、美味しいっ!  美味し過ぎて、やめなきゃって思うのに次々に口に入れちゃうのを止められない。  入れるのやめなきゃ話せないのにっ!  モグモグ……ゴクン……。モグモグ……ゴクン……。  それを無言でしばらく続けて……お重の中が、最初の量の10分の1くらいになったところで私はお吸い物をひと口飲んで、やっと手を止めた。  そうしてからようやく、私の前で澄ました顔でうな重を口に運んでいる御神本(みきもと)さんを睨みつける。  ピンと伸びた背筋や、箸を口元に運ぶ角度など、何を取っても所作がすごく綺麗で、お育ちの良さを感じてしまう。何だか悔しいな。  そんな人を前に私はガサガサと騒ぎ立てる。 「さっきのっ!」  言ったらチラリと視線を投げかけられて、 「さっきの? はて……何の話だろうね?」  分かってるくせに絶対(とぼ)けてる。 「9つしか離れてないくせにボケるのは早いんじゃないですか?」  そこで、御神本(みきもと)さんの手元のお重を見て、我慢できずにもうひと口だけ、と今にもなくなりそうな自分のうなぎをパクリ。  んーっ! ふかふかで本当美味しいっ。  じゃなくて――!
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