3.なし崩し的にというより飯崩し的に

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「つっ、妻とか何とかっ。わ、私っ、ぷ、プロポーズも受けてませんし、あったとして……それをお受けするだなんて一言も」  乗り気になったのは、うなぎの(うたげ)(ぞく)(ひつ)まぶし・肝吸い編」での関わりだけですっ!  色々思いめぐらせつつも、とりあえずそれだけは、と何とか言ったら、「戸籍が変わることがそれほど問題か? うちに養子に入ったと思えばいいだろう」って、本気ですか? 「それって物凄く大きなことだと思うんですけど。そ、そもそもっ。ミキ……、ヨ、リツナはそれでいいの? 正直貴方ほどの男性(ひと)なら、私みたいな相手にしなくても、もっともっと良いご縁があるでしょう?」  言ってて虚しくなってくるけれど事実だから仕方ない。  目の前の彼ならば、きっとどこぞの深窓の令嬢とだって簡単に結婚できてしまえるはずだ。  私よりもっとお金持ちで、親御さんが権力を持ったお嬢さんと一緒になって、その後ろ盾を得ることだって出来るでしょうに。  正直な話、私は下手をしたら負債を抱えたバリバリの「ハズレクジ」だ。  現に――。 「(めと)ろうとするから……学費なんてものを肩代わりしなきゃいけなくなるし、うなぎだって奢らされてしまうんですっ!」  日本文学科の学生らしく、古めかしい言葉を使ってバシッと決める。ついでにバンッ!とテーブルに手をついて、リアクションもバッチリに前のめりになって力説した!と同時に、ガタッと音がして。  気がつくと御神本(みきもと)さんが私の方へ身を乗り出してきたんだと分かった。
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