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「家賃を払える目処が立たないとなるとねぇ、可哀想だけど出て行ってもらうしかないんだよ。こっちも慈善事業じゃないんでね」
年配の大家さんの溜め息混じりの声を聞きながら、溜め息をつきたいのはこっちだよぅ、なんて思ってるだなんて、言えるわけない。
「もちろん私も悪魔じゃない。村陰さんのお宅の現状だって分かってるつもりだ。だからね、すぐにとは言わないよ。そうだね、1ヶ月猶予をあげよう。だからその間に、ね?」
ね?と言われても私、なんて答えたらいいの?
どう答えるのが正解?
この春から、念願叶って幼なじみの小町ちゃんと一緒に、華の女子大生デビューを果たしたばかり。
今年度の学費に関しては、お母さんから「一括納入してあるから大丈夫。花々里ちゃんは勉強に専念して」と言われた。
私が幼い頃に父が他界し、母子家庭で母娘ふたり支え合いながら頑張ってきたうちはそんなに裕福ではないから。
てっきり学費も前期、後期に分割して払うんだと思っていた私は、どこにそんなお金が?って思ったけれど、きっと私の進学のために貯めてくれていたのよね?と自分に言い聞かせた。
だからとりあえずそこまではいいとして――その先はどうなるんだろう。
学費が工面できなければ、進級は諦めないといけなくなるよね、きっと。
そもそも――。
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