3.なし崩し的にというより飯崩し的に

12/12

2661人が本棚に入れています
本棚に追加
/703ページ
 唇にご飯粒とかついてたから取ってくれました、とか、だったりし、ます?  恐る恐る顔を上げて御神本(みきもと)さんのお顔を(うかが)い見たら……。 「例え花々里(かがり)本人でも、俺の妻になる女のことを卑下(ひげ)することを、俺は認めん」  ってそれと今の行動(キス?)とどういう関係があるのですか、御神本(みきもと)さんっ。  そんな怖い顔して見つめられても私、誤魔化されませんからね!? 「私っ、ファーストキスだったんですけどっ」  何だか悔しくて涙目でつぶやいたら、「大いに結構じゃないか。夫が初めての相手とか。初々しい(おぼこい)感じがして俺的には最高のシチュエーションだぞ?」  とか。  だからそうじゃなくて――!  〝俺的には〟っていうのも気に入らないですけど、百歩譲ってソコは目をつぶったとしても、です。 「う、なぎ……」  ボソリと恨みがましくつぶやいたら、さすがにどういう意味だか分からなかったらしくて、御神本(みきもと)さんが押し黙る。 「うなぎの……味がしました……」  小さくポツンと。 「わ、私のファーストキス、うなぎの味だったんですよぅっ!」  それが大問題なのですっ!  いくら大好きでも初めてのキスの思い出がうなぎと直結は悲しすぎる。 「理想は桃の香りとかレモンの香りだったのにぃーっ!」  乙女の夢を返せぇーーーっ!
/703ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2661人が本棚に入れています
本棚に追加