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なんてことを考えながら歩いていたら。
「おはよう、花々里。迷わず来れたとか感心じゃん。――……ってオイ! 無視かよ!」
いつの間にか寛道との待ち合わせ場所にたどり着いていた――ばかりか通り過ぎてしまったみたいで、慌てた様子の寛道に腕を掴まれた。
途端、昨日頼綱に、寛道に掴まれた腕のアザに口付けられたのを思い出した私は
「ダメ!」
言って、慌てて寛道の手を振り解いた。
あまりに強く突っぱねてしまって、ハッとして寛道を見たら、ひどく傷付いた顔をされてしまった。
「……ごめん。でも、お願い。不用意に触るのは……やめて?」
寛道に謝って、彼の顔を見つめたら「分かった。その……こっちこそ悪かったな」って素直に謝り返してくれて。
私はホッと胸を撫で下ろす。
「あ、そういえば」
そこでふと容器のこと思い出した私は、カバンの中から綺麗に洗ったそれを取り出して寛道に手渡した。
「ごちそうさま。みんな、大絶賛だったよ。おばさんにも『美味しかったです。ありがとうございました』って伝えてもらえる?」
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