21.可愛くてたまらない

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***  それにしても――。  今日の花々里(かがり)は一体どうしてしまったんだろう?  いくら長時間ひとりぼっちで待たせていたからって、俺に抱きついてくるとか。  ロビーで花々里にしがみつかれた時、俺は一瞬何が起こったのか理解できなくて呆然としてしまった。  それを、花々里は俺が怒ったか呆れたかしたんじゃないかと判断したらしいんだが、俺がそんな風に思うわけがないと、何故思えないんだろう?  俺は散々あの子に自分の気持ちを明け透けに伝えていると思うんだがね。  なのに何でそこで慌てたように距離をあけるんだい?  俺がどんなに距離を詰めようと努めても、いつも自分は使用人だから、と一線を引いて踏み込ませてくれないのには、何か理由があるんだろうか?  そんな花々里なのに。  今日は無意識とはいえ、自分から俺に身体を寄せてきたり、俺からのキスを受け入れてくれたり、明らかにいつもと様子が違っていた。  試しにショップ店員(第三者)の前で花々里のことを「フィアンセ」と称してみたけれど、今までみたいに全否定もされなかったし、何なら照れてさえいるように思えて。  これは……もう一歩踏み込んでも許されるだろうか?  そうだな。花々里のスマートフォンを見た時に見つけたアレを、彼女に突き付けたなら、あるいは――。  ねぇ花々里。  今夜は少し、キミとの関係を進展させたいな?とか思ってるんだけど、どうかな?  許してくれるかい?
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