22.わーん、ごめんなさいっ!

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 美味しい(うなぎ)をたらふく食べて――今日はちゃんとうな重だけじゃなくて(ひつ)まぶしや肝吸いも食べさせてもらいました!――、ほわほわーんとしたで帰宅した。  とは言え私は未成年。  もちろんほろ酔いといってもアルコールを摂取したわけではなくて、待ちに待ったと、に酔いしれただけ。  私がここまで浮き足立った気分になったのは、何も美味しい鰻をお腹いっぱい食べさせてもらえたから、ばかりじゃなくて。  実際にはそのお店のその一室でした、頼綱(よりつな)とのファーストキスを思い出してしまった、というのが大きいと思う。  こんなこと恥ずかしくて頼綱には言えないけれど、どんなに頭の中で取り消そうと頑張ってみても、鰻を食べた途端、彼との初めての〝キスの味?〟を思い出してしまったんだもん。  結局私のファーストキスは、桃の甘い味と瑞々(みずみず)しい優しい香りなんかじゃなくて……。  ましてや頼綱が「元気な花々里(かがり)にピッタリの明るい色だから」と選んでくれたスマートフォンのカラーみたいな酸っぱくて爽やかなレモンの香りでもないみたい。  頼綱の唇を見て思い出すのは、茶色くてつやつやとした甘辛い濃厚なタレと、鰻のコッテリとした香ばしい……あのヨダレを誘うにおいのほうなの。
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