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頼綱は、私のパンプスを手にしたまま運転席側のドアを開けたところで。
「あ、あのっ」
靴を持っていかれたら私、困ります!
でも、その呼びかけに応じられることもなくドアが閉められて、私はにわかに不安になった。
頼綱は純粋に靴擦れの具合いを気にしてくれていたのに、私が変な気持ちになって喘ぐみたいな声を上げたりしたから、呆れられて置いていかれちゃった!?
泣きべそをかきそうになりながらオロオロしていたら、助手席側のドアが開けられて。
涙目のまま頼綱を見上げたら「そんなに痛かったかい? すまないことをしたね」と頭をふんわり撫でられた。
痛かったわけじゃない。
ただ、貴方に愛想を尽かされたんじゃないかと不安になっただけ。
「頼綱……っ」
思わずギュッと頼綱のスーツの端っこを掴んだら、「おいで」ってそのまま助手席から抱き上げられた。
「ひゃっ」
いきなりの浮遊感に驚いて頼綱の首筋にしがみついたら、膝裏に手を差し込まれて。
これは、お風呂でハプニング以来、実に2度目の〝お姫様抱っこ〟なのでは?と気が付いた私は、彼にくっついたまま恥ずかしさに顔が上げられなくなる。
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