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御神本邸の敷地は広い。
頼綱が私を抱き上げたまま器用に車のドアを閉める気配を感じながら、このままの状態で庭を突っ切るのは大変なんじゃないかと思い至った。
だって私、食いしん坊だからそれなりに重いと思うし!
「わ、私自分で――」
歩けるって言おうと思ったら、「絆創膏を剥がしてしまったのは俺だから」ってすぐ耳元で頼綱の優しい声。
彼の身に纏う香水の香りと、大好きな低音ボイスにもっと抗議しなきゃダメなのに、頭の芯がぼぉっとして鈍ってしまう。
「花々里はもう少し太ってもいいね」
そんな私を抱いて歩きながら、頼綱がポツンとつぶやいて。
その言葉にハッと我に返ると、私は「滅相もございません!」と、頼綱に擦り付けたままの首をふるふると振った。
だって私、小町ちゃんに比べたら二の腕とかめちゃポヨポヨしてるもん!
「くすぐったいよ」
途端クスクスと笑われて「ごめんなさいっ」と少し距離をあけたら、
「離れないで? 落ちたら大変だからね」
少しだけ身体を抱き直されて、私はソワソワともう1度頼綱にギュッと寄り添うようにしがみついた。
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