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――のはいいけれどっ。
頼綱の部屋、どこっ!?
私の部屋とそんなに離れた位置にはなかったはずなのに、頼綱の部屋が消えてしまった。
これはきっと緊張のせいに違いないっ。
ぺたぺたと素足で板張りの廊下を歩きながら、スリッパ履き忘れてきちゃった……とかどうでもいいことを思ってしまう。
と、手の中のスマートフォンが急に鳴り始めて、私はビクッとしてしまった。
見ると、ちゃんと頼綱からの着信って分かって、前の携帯から電話帳がきちんと引き継げているのが実感出来てホッとする。
「もしもし?」
恐る恐る出たら、「あまりにも遅いんで、もしかして迷子になっていたりしてないかと思ってね」とまるで見てきたみたいなお言葉が。
迷子ではなくて……そちらのお部屋が消えたのですっ。
なんてバカなこと、言えるわけもなく。
「あ、あのっ、ち、近くにはいると思うんですっ。もうじき辿り着くはずなんですっ」
ソワソワしすぎて、思わず敬語になる。
「花々里、近くにはって――」
そこで堪えきれなくなったらしい頼綱に、思い切り笑われてしまった。
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