22.わーん、ごめんなさいっ!

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 頼綱(よりつな)は私の顔を見るなり、 「何で風呂から出てこんな場所に迷い込むかなぁ」  すごく疑問符満載な顔をして眉根を寄せて。  私、無駄とは知りながらも必死で言い訳をしたの。 「お、お風呂からじゃないもんっ。一回自室に戻ったから……私の部屋からだよっ!?」  一生懸命言い募る私をさえぎって、「それにしたってキミの自室は割と風呂に近い位置だから、言い訳にはならないと思うよ? ついでに言うと俺の部屋も風呂場から近い」と苦笑されてしまった。  頼綱(よりつな)は私の手をグイグイ引っ張りながら、「ここが風呂場」、「ここが花々里(かがり)の部屋」とアナウンスをしてくれて。  私の部屋(そこ)から本当に目と鼻の先――十数歩程度の距離――の自室に着くなり「そしてここが俺の部屋」と言って私を振り返ると、「この距離で迷子になれたの、不思議だと思わない?」って聞いてくるの。  本当、頼綱の部屋、ぐうの音も出ないほどすぐそこで……。  きっと考え事をしていたからだとは思うけれど、この距離で迷子になったと思うと、さすがに私も何にも言い返せませんでした。
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