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「さて、じゃあ足の手当てから始めようか」
言われて、寝床を指さされた私はソワソワと視線を彷徨わせる。
「あ、あの、私、あっちの椅子でもよろしくってよ?」
部屋の片隅に机と椅子を発見した私は、そっちでいいよ?と頼綱を見つめた。
緊張のあまりどこのお嬢様ですか!?みたいな言葉選びをしてしまったことにさえも、頓着していられないくらい気持ちがざわついてるの。
ほら、だって、車でも椅子の上に膝立ちだったのよ?
だから頼綱の部屋でもそれで大丈夫だと思うの。
ご主人様のベッドに近づくだなんて、滅相もございません!
頼綱の返事を待たずにいそいそと椅子の方へ行こうとしたら、ギュッと手を掴まれてそのまま有無を言わせずベッドに座らされてしまった。
ひー!
ベッド怖ぁーい!
「車の中ではシートに座るしか無かっただけだろう? 何故広い部屋でわざわざそんな窮屈なポーズを取る必要がある?」
ズイッと顔を近づけられた私は、慌てて顔を背けた。
髪を下ろしたその姿、見慣れてないんですってばぁーっ!
「それにあの椅子は回転椅子だ。花々里のことだから何かするたびにくるくる回りそうで嫌なんだがね?」
私の緊張なんてお構いなし。
頼綱がズンズン近づいてくるから私はどんどんのけぞって。
だってだって! お互いパジャマって……何だか恥ずかしいんだもん!
自分のパジャマ姿に視線を移した私は、ハッとした。
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