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ギュッと目を閉じた私の顔にサワサワと触れるのは、頼綱の前髪?
そう思ったのと同時、とても優しくキスを落とされて。
薄く開いた唇の合わせ目から、やんわりと舌が伸ばされる。
「……んっ」
小さく喘ぐようにしてそれを受け入れると、私はおずおずと頼綱に応えた。
今まで頼綱からされたどの口付けよりも、今されたばかりのそれは甘く優しくて――。
きっと、頼綱と気持ちを通わせて初めてのキスだからそう思うんだ。
それに、今回のは今までとは違って。
食べ物じゃなくて歯磨き粉味のキスだった。
まるで、少女漫画か何かに出てきそうな、そんな味。
チュッと音を立てて舌先をやんわり吸い上げるようにして彼の顔が遠ざかるのを、私はうっとりと見上げる。
「花々里。今度こそ……俺からのプロポーズ、ちゃんと受けてくれるかい?」
じっと頼綱に見つめられた私は、今度はちゃんと声に出して――でも消え入りそうな声音で「はい……」と答えてうなずいた。
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