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「――び輪がまだなのが気になってるんなら明日にでも見に行こう」
私の戸惑いを、勝手に妻としての体裁が整っていないことか何かだと勘違いしたらしい御神本さんが、そう言って気遣わしげに頭を撫でてきて。
ふわりと漂う例のいい香りに心臓バクバク。そのくせ口の中にはじわりと生唾が滲んで……ときめきたいの、餌付けされたいの、どっちなの!?と叫びたくなる。
いや、だからこの人、私のご主人様じゃないんだからね、しっかりしなさい、花々里!
ちょっと美味しいものを立て続けにもらったからってチョロすぎるでしょ!?
そのせいで彼を跳ね除ける動作が遅れてしまうとか、情けなさ過ぎる――。
「わ、私っ、犬じゃないので首輪は!」
何とかそう言って、彼の手をスパーン!と払い除けたら「ん? 花々里は首輪が欲しいのか?」と、その手を握られて間近で首を傾げられた。
だから要らないって話なんですってばっ!
「俺は妻に首輪をつける趣味はないから……そこはネックレスで妥協してもらえると助かる。ネックレスなら指輪を見繕うついでに一緒に買ってやれるしな」
とか。
ちょっと待って、ちょっと待って。
話、聞いて?
「なっ、んで。指輪とか首輪とかネックレスとかプレゼントしてくれる話になってるんですかっ?」
「――? だから首輪は却下だという話なんだがね? 花々里こそ俺の話を聞いているか?」
ひーん。
なんか話が劇的に噛み合いませんっ!
「と、とりあえずっ! 気持ちを落ち着かせるためにさっきの飴、もうひとつずつもらっていいですか?」
腹が立ったので、どさくさに紛れて言ってやったわ。
ふふふふふ。
私、賢いっ!
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