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い、いつもと景色が違うんですが!?
それもそのはず。
いま私がいるのは頼綱の部屋で、自分の部屋じゃない。
ほんの少し景色が変わっただけで、「右だっけ、左だっけ?」ってなるのは方向音痴の性というやつで。
入り口に突っ立ったまま廊下を睨みつけて止まってしまった私に、「左だよ」とすぐ背後から頼綱の声がかかる。
いつの間にか、私のすぐそばまできていた頼綱に、身体の向きを変えるようにそっと両肩に触れられて、
「わ、分かってるもんっ!」
思わず肩を跳ねさせて、彼から距離をとるように飛びのいてから、それを誤魔化すみたいに頼綱の方を振り返って目一杯虚勢をはってみせた。
と、そんな私を見るなり頼綱が固まってしまって。
そのことに気がついた私は「ん?」と思ってキョトンとする。
「花々里、それ……」
呆然としたようにそうつぶやいた頼綱が、慌てたように視線を背けた。
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