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「そのっ、わ、私のほうこそ見苦しいものを見せてしまってごめんなさいっ」
頼綱は、今でこそ小児科に配属されているようだけど、ゆくゆくは産婦人科を継ぐような人だ。
……きっと女性の身体なんて見慣れているはず。
そんな彼が、たかだか二十歳にも満たないような小娘相手にこんなに気を遣うだなんて。
他所様の身体と比べてみたことはないからハッキリとは分からないけれど、私、恐らく俗に言う〝貧相さん〟なんだ。
だから頼綱、見ちゃいけないものを見てしまった気になって、居た堪れなくなったに違いない。
それだけならまだしも、あまりに色気がなくて……見てしまったことを後悔させてしまったのかも。
こんな私が、頼綱のプロポーズなんて受けて本当に良かったの?
もっとナイスバディな女性の方が良かったんじゃないかな。
そういえば頼綱、食い意地張りまくりの子豚ちゃんな私に、「もう少し太ってもいい」って言った。
あれだって、今思えば「もう少し付けるべきところに肉を付けた方がいい」っていうのを遠回しに言いたかっただけなんじゃ……?
ぐるぐる悶々しまくりで、いつの間にかそんなことまで思い始めてしまった私は、何だか泣きそうになって。
ギュッと毛布の合わせ目を内側から手繰り寄せるようにして胸元をきつく覆い直すと、無意識のうちにうつむいて下唇を噛み締めていた。
「ちょっと待って、花々里。いま、……キミは見苦しいとか言わなかった? ねぇ、誰が花々里に対してそんな酷いことを言ったの?」
しゃがみ込んだまま床ばかり見つめていたら、私の前に膝をついた頼綱に、あごをすくい上げるようにして上向かされて、真正面から顔を覗き込まれる。
「だ、誰にも言われてないっ」
――自分が思っただけで。
そう言外に含ませて頼綱を見上げると、再度唇を噛むようにして引き結んだ。
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