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「唇を噛むのはやめなさい」
言うなり、頼綱に親指で口の端を割るようにして、噛み締めていた唇を開かされて。
「俺が目を逸らしたことでキミにそんな風に思わせたんだとしたら、すまない。――けどね、花々里。それは大きな誤解だよ?」
言うなり頼綱は私を立ち上がらせると、身体に巻きつけていた毛布を剥ぎ取ってしまった。
「やっ、ダメッ」
慌てて両手で胸元を隠そうとしたら、すかさず頼綱に両腕を掴まれて阻止されてしまう。
このままじゃ見えちゃう!
何とか身体を丸めて服をダボつかせたいのに、そのまま壁に両手を押し付けるように磔にされた私は、逆に胸を突き出したみたいな格好になってしまって真っ赤になる。
「より、つ、なっ、お願っ、離して……っ」
涙目になりながら訴えてみたけれど、頼綱はまるで聞く耳を持たないみたいに微動だにしてくれないの。
そればかりか、さっきは慌ててそらしたはずの私の胸元を、溶けてしまいそうなぐらい熱のこもった視線で見つめてきて。
もう、それだけで余計にそこが固くしこってくるのが分かった私は、どうしたらいいのか分からなくなる。
「やっ、見ない……でっ」
頼綱、男の人の目をしてる――?
そのことに気付いた途端、恥ずかしさからだけじゃない熱がぶわりと身体を満たして、ますます混乱してしまう。
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