24.もしかして、という懸念

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 (うなぎ)を食わせた時の、で鰻に夢中だったあの様子。  アレを見せられた時からだろうな。    俺が花々里(かがり)から目を離せなくなったのは。  元々よく知った女性(ひと)の娘ではあったし、顔も好みだったから。  色々がんじがらめにして手中に収めるのも一興かなと思ってはいたんだ。  さして結婚に対して強い思い入れがあったわけでなし。  自分が幼すぎて1度は手放してしまった女の子のことが、心にずっと(トゲ)のように引っかかっていたのも嘘じゃない。  今度こそ、おのれの一生涯(いっしょうがい)をかけてその子の面倒を見るのも悪くないかなと自分勝手な理由で持ちかけた政略結婚だったんだけど。  俺は過去の経験から、こちらが付き合いを持ち掛ければどんな女性だって簡単になびくはずだと(たか)(くく)っていた。  なのに当の花々里は一筋縄ではいかないし。  手に入らないと思ったら変にムキになってしまって……。  そうこうしているうちに、気が付けば自分がかなり本気で花々里に傾倒していることにハッとさせられた。  結局今となってはどう足掻いても抜け出せないほどに、ドップリにハマっていると認めざるを得ない。  だから、ね。  あの子が俺のプロポーズを受けてくれると返事をくれたときは本当に嬉しかったんだ。  だけど――。
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