24.もしかして、という懸念

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 そうなってみると俺にはひとつだけ、どうしても気になることが浮上して。  それが、せっかく俺に傾き始めた花々里(かがり)の心を簡単に俺から引き離してしまうんじゃないかと気が気じゃないんだ。  花々里が話してくれた、〝大好きだったお兄さん〟とやらは、きっと、俺たちにとって弊害にしかならないよね?  そいつはある日突然あの子の前からいなくなったという話だけど、それを言うなら俺だってそうだ。  だとしたら、いつまた俺みたいに舞い戻ってこないとも限らないよな?と思ってしまって。  話を聞く限りだと、腹立たしいことに花々里にかなり影響を与えた男のようだし、全くもって油断が出来ないじゃないか。  何しろ花々里は幼少の頃、あんなに「よりつな」「よりつな」と懐いてくれていたはずなのに、いざ再会してみても、俺のことなんて微塵も覚えていなかった。  そればかりか、未だに思い出しもしないからね。  もしかして、という懸念が拭えない以上、花々里を〝法的に〟自分のものにするのを急いだほうがいいのかも知れない。  あの子がまだ20歳(はたち)にも達していない未成年だとか、大学に通う学生だとか、そんなのは正直どうだっていい。  そもそも俺たちはすでにひとつ屋根の下で寝食をともにしているし、そこに書類上の〝婚姻〟という事象が加わったからと言って日常生活には何ら変化はないだろう?
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