25.離さない

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花々里(かがり)さん、昨夜は余り眠れなかったのでございますか?」  扉を開けて顔を覗けるなり、八千代さんが心配そうに眉根を寄せてきて。  寝起きで髪の毛ボサボサの私が、無意識に抱きしめたままだった頼綱(よりつな)の毛布を見て、ハッとしたように息を飲む。 「あの、もしや昨夜は坊っちゃまとあのまま……」  ――お休みになられたのですか?  と続くようにも、  ――さらにその先を経験なさったのですか?  と続くようにも思える微妙なニュアンスで言葉を止めていらした八千代さんに、私は慌ててフルフルと首を振った。  途端またしてもズキンと頭が痛んで、思わずこめかみに手を当てる。 「実は今朝は頼綱坊っちゃまもお寝坊をなさったんですよ?」  どうやら頼綱は、もう目を覚まして食卓で待っているらしい。  時計を見ると、間もなく8時になろうかというところ。  いつもなら、頼綱はもうとっくに病院へ向けて出かけた後のはずの時間。  もしかして、頼綱、体調が悪くてお休みしたのかな。  不安になってソワソワと八千代さんを見つめたら、 「今日は遅番なのだそうでございます」  とにっこりされてホッとする。  よかった。  病気じゃなかった。
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