25.離さない

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「……おはよう、花々里(かがり)。昨夜はよく眠れたかな?」  問いかけてくる彼自身、寝不足なのがありありとうかがえる、どこか疲れた表情で。 「じ、実はあんまり。――でも……頼綱(よりつな)も、だよね?」  本当は心配すべきところのはずなのに、何だか自分だけが眠れなかったんじゃないんだと思ったら、ちょっぴり気持ちが高揚して。 「嬉しそうだね」  頼綱に見透かされてしまった。 「だ、だって……私だけ気にしてるみたいなの、悔しかったんだもんっ。頼綱も眠れなかったんなら、おそ……おあいこでしょう?」  〝おそろい〟と言おうとして、ひとり浮き足立っていると思われるのが恥ずかしくて〝おあいこ〟と言い直す。  なのに「そうだね、おそろいだね」って口の端に微笑を浮かべて幸せそうにサラリと言っちゃうの、ずるいよ。
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