25.離さない

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*** 「お弁当とおやつは(わたくし)が用意しておきましたので、これを持って行ってらっしゃいませ」  時折痛む頭に眉をしかめながらもバタバタと朝食を済ませて身支度(みじたく)を整える。  いつもならお代わりをするご飯が一膳しか食べられなかったのは、時折思い出したようにズキン!と痛む頭のせいかな。  今朝はお弁当を作り損ねてしまったから、学食かどこかで何か調達するしかない?と思いながら廊下に出たところで、八千代さんが和柄の小さな風呂敷包みを手渡してくださった。  これが、八千代さんが先程おっしゃった「手立てを講じる」の一端なのかしらと思って。 「あ、あのっ」  だけど本来ならば私も八千代さんと一緒に朝食作りをしないといけない立場だったのに……昼食までっ!と思ったら恐縮してしまう。  寝坊した挙句、やるべきお仕事をすっぽかしたばかりか、本来ならば私が自分で何とかすべきお弁当まで準備して頂いて……。  しかも今、サラリとおやつまで入っているようなこと、おっしゃいませんでしたか!?  至れり尽くせり過ぎて、素直に甘えていいものか戸惑ってしまう。  受け取ったばかりの可愛らしい包みを見て、思わず眉根が寄って。  本当下っ端の新人お手伝いさんのくせに、何やってるのよ私!ってただただ情けなさが募った。
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